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こ」といった生活感に溢れた呼び方もあった。部屋の向きや大きさによる、「南の8畳」「10畳」などの呼称、部屋にある物から、「仏様の間」「テレビの部屋」などの呼称、使っている人による、「ばあちゃんの部屋」「新婚さんの間」などの呼称、部屋の新旧による「新間」や「古い家」、その他、「浜の部屋」「山の部屋」の呼称もあった。また、2階は、2階の部屋全体を「2階」、1階は「下」と呼ぶことが多いようである。
対象住戸は、家業によって住宅形態が多様であるため、間取りも部屋の呼称も多様であるが、漁家ではやや統一的な間取りと部屋の呼称もみられ、通り庭に沿うオモテとオロシから成る間取り形式が認められた。最も居室数が少ない、平屋2室の漁家では、通り庭に沿った8畳のオモテと3畳のオロシ、総2階家の4室の漁家では、通り庭に沿った1階・2階とも同様の8畳のオモテと4畳のオロシから成る間取りがみられた。(写真268)
オモテは6畳〜10畳の広さで、客間として、儀式の間として、最も大事にされる。個人の寝室となる場合は、ほとんどが老夫婦の寝室にあてられ、それが病室となり、そのまま看取りの部屋ともなったようである。自宅で老親を看取ったしみじみとした話を数軒で伺った。オロシは、今回の調査では漁家にだけみられた呼称であるが、3〜4畳の小部屋で、食事の場であり、イロリ(ユルリ)のある間であった。「母はいつもオロシのイロリの横に座っていました。イロリをとってからも、そこに火鉢を置いて座っていた。」「小さい頃は子供が多くて、丸いちゃぶ台一台と、ばあちゃん達は高お膳で、オロシで食事をした。たいへんだった。」という話が聴かれた。

 

(3)家の神様
続いて、家の神様についてみると、荒神様(火の神様と呼ぶ家もあった)、水神様(水の神様と呼ぶ家もあった)、恵比須様、弘法様(大師様と呼ぶ家もあった)、金毘羅様、氏神様、高神様、大黒様、稲荷様、便所の神様など、種々の神様がみられ、特に荒神様・水神様はほとんどの家で奉られていた。1住戸内で最大で8つの神様が奉られている例もあった。家の神々には、毎月1日と15日に、酒、水、塩、米、榊等を供えるところが多いようである。「小さい頃にはもっとたくさんの神様が家にいました。」「お姑さんがされていた通りに世話をしています。」「何の神様かは詳しく分かりませんが、自分勝手で変えられないので、元のまま奉っています。」といった回答もみられた。

 

(4)住生活と住宅の変化
住生活や住宅の有り様は、家族生活の変化や、油津の産業構造や社会状況の変化、台風などの災害等の影響を受けて、種々に変化してきている。住宅の改造内容は、表16のようにまとめられる。
家族生活の変化に伴う変容を、若夫婦の住生活からみると、跡取り夫婦の場合、2階の部屋をあてられる例が本調査では多かった。「2階は若夫婦の部屋で、ここは私達のものみたいだった。子供は2階の奥の部屋で生んだ。」「長男夫婦だから、私達は2階の床の間のある部屋をもらったと思う。長男はここで出産した。ここは前から出産の部屋で、お姑さんもそうだった。」といった話が聴かれた。出産も2階の若夫婦の部屋およびその奥の部屋で行われることが多かったようである。調査回答者

 

表15 部屋の呼称

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表16 住宅改造の内容

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